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昔に書いたお題

沖田さんと千鶴ちゃんの微妙な話
全然甘くないので、気を付けて下さい(?)


2009/4/19作成
2012/7/23修正

+ + + + + + + + + +



咳込む目の前の背中を見詰め、傍らに用意されている盆に載った薬と湯呑みを横目で確認してから千鶴はそっと、揺れるその背中に手を伸ばした。

「そんなに、死にたいのですか?」

問うた千鶴の静かな声に沖田は口許に手の甲を当てながら振り返り、口端を吊り上げた。

「そう、見える?」
「薬は嫌いだと仰って頑なにお飲みなられないのはそう云う事ではないのですか?」
「今日は厳しいね。」

顔を歪めて笑う沖田に千鶴は小さく息を吐いた。
沖田総司は死の病を患っている。それを知ってるのは一部の者のみ。その一部に含まれる千鶴は松本良順に言われてこうして薬を運んでいる。運ぶだけで済むならば何でもない仕事だが、放っておくとこっそりと薬を捨ててしまうような輩が相手だと運んで終わりとはいかない。

「事実を述べているだけです。」

どんなに心配しても、どんなに心を傾けても、伝わらないのならば意味はない。以前、どうして構うのかと聞かれて『心配だから』と言ったら『それで?』と返されて以来千鶴は決して必要最低限以外の言葉を話すのを止めた。煩わしいと思われたくなかった。余計なことを言わなければこのまま、傍に居れると勘違いしているから。

「そう。事実ね・・・。」

背中に触れる千鶴の手を振り払い沖田は目を細めた。

「何が事実なの?」
「私に見えている貴方です。」
「君の主観ってこと?」
「客観的、だと思ってください。」
「煩いよ。」

そう言った後再び咳込むその姿を千鶴は無表情で見詰める。

「・・・放っておいてくれないかな。君が居ても治らないんだからさ。」

邪魔なだけだよ。薬を無視して湯呑みに口を付ける。

「薬も飲んでください。」
「飲んでも気休めだろ?」
「死にたいのですか?」
「そう見える?」

繰り返しの会話に千鶴は微かに眉間を寄せた。

「・・・・・貴方は意味が、分らないです。」

膝に載せている手に力を入れ、袴を握る。悔しい。分らないことが、悔しかった。袴を握る千鶴の両の手を見て沖田は笑った。

「分らなくていいよ。君に分って欲しいとも思ってないし、分るとも思わないからね。」
「私も、分りたいと思いません。」
「うん、それでいいよ。」

それでいいよ、と再度言ってから沖田は一度、大きく息を吐いた。

「だからさ、見張らなくていいよ。」
「松本先生に言われているので。薬を飲ますように、と。」
「律儀だね。・・・・うつるよ?」

クスクス笑うと沖田は小さく咳をした。

「薬、飲むまでここに居るの?」
「はい。見届けるのが私の仕事ですから。」
「それは、困ったな。」

困った、そう呟きながら沖田は眉間を寄せて薬を睨んだ。

「死にたくないのなら飲んで下さい。」
「飲んでも死ぬよ。」
「それでも、飲んで下さい。」
「君は僕に死んで欲しくない訳?」
「生きるか死ぬかならば、生きて欲しいとは思います。」
「どうして?」
「理由が必要ですか?」
「うん。気になるね。」
「誰だって、知り合いには死んでほしくないと思いますけど。」

首の後ろを摩りながら沖田は、知り合いね。と小さく呟いた。

「それだけ?」
「他にも何か必要ですか?」
「要らないね。」
「要らないと思います。」
「うん。そうだね。よかった、好きだからとか言われたどうしようかと思ったよ。」
「私が?」
「うん。」

軽い調子で頷く沖田に見えないように千鶴は下唇を噛んだ。噛んで、顔を上げて微笑った。

「死ぬことしか考えていない人のことなんて、愛せません。」

千鶴の微笑みを見て、言葉を聞いて、沖田は眉尻を下げて笑った。

「それでいいよ。」

寂しそうに、笑った。








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