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52.『小説ならここで重要な手掛かりが見つかる展開でしょ!!』

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道場の端まで行くと床に膝をつき、手の甲で目に掛った前髪を退けた。床に張り付く雑巾を掴み立ち上がると振り返り自分が雑巾がけをした範囲を見た。自分と同じ様に雑巾を持って立ち上がる部員を目の端に捕え、沖田はその場から一歩踏み出した。

「終わった?」

沖田の問い掛けに部員達は頷いた。

「終わったよ。はー、疲れた。」
「早いよ。」

本当に疲れた様な表情を浮かべる相手に沖田は苦笑いした。

「さてと、雑巾片付けて少しのんびりすっかな。」

両手を天井へと向け、身体を伸ばす部員の横を通り過ぎて沖田は道場の入り口に脱ぎ捨ててある靴の踵を踏んで履くと外にある水道に向かった。蛇口を捻り冷たい水に眉間を寄せながら雑巾を洗う。

「今日の練習試合、誰出んだろな。」
「さぁね。」

横で雑巾を洗う部員に短く返し、洗い終えた雑巾の水を絞る。

「沖田は出るんじゃねーの?」
「どうだろ。」
「つか、お前と永倉さんは決定だよな。」
「あと平助と斎藤もな。」
「試合の方式もまだ分かってねーからなぁ。」
「練習の時に土方先生が説明するんじゃないのかな。」

雑巾を絞り、自分の手を洗う沖田は小さく息を吐いた。

「まぁ、取り敢えず僕は今日の試合は出たくないけどね。」
「は?何で??」

濡れた手を拭くタオルを持ってくるのを忘れた沖田に別の部員が自分のタオルを差し出した。沖田は短く礼を言ってタオルを受け取る。

「総司出なきゃ向こう来る意味ないんじゃないか?」
「向こうの都合なんか知らないよ。」
「何で出たくねーの?」

沖田は借りたタオルを返し、雑巾を取った。

「一番見て欲しい相手が居ない所で勝っても意味ないから。」

ニッコリと笑みを浮かべそれだけ言ってその場を離れる沖田の後姿を、部員たちは首を傾げながら見送った。

「一番見て欲しい相手?」
「勝つって、誰に。」
「・・・・沖田、もしかして彼女出来たのか?」
「つか沖田に彼女の5,6人居ても驚かねぇし。」
「確かに。」
「俺もイケメンに生まれたかった!!」

雑巾を適当に干すと沖田は道場の壁に掛った時計を見上げた。練習開始まであと4分。そろそろ他の部員が集まってくる時間だ。と、いうか集まらなければ問題だ。身体を軽く伸ばしながら道場の壁際に向かって歩いていると道場の入り口の方が騒がしくなってきた。横目でその様子を確認する。

「おいーす。総司。」

軽く片手を上げて自分の名前を呼ぶ永倉に沖田は薄く笑った。

「新八さん時間ギリギリ。主将がそんなんでいいんですか?」
「あ~?俺よりも平部員が先に来んのが当然だろ。つか他まだかよ。」
「まだですよ。今日は左之さんと一緒じゃなんですね。」
「あいつ今日の練習試合出たくないから土方先生んとこ行って直訴中。」
「成る程。」

本気で出るのを嫌がっていた原田を思い出し永倉はニヤニヤと笑った。

「新八さん、悪い顔。」
「お前に言われたくねぇよ。」

ケラケラと笑いながら永倉は沖田の頭を小突いた。

「今日の練習試合、メンバーってどうなってるんですか?」
「さぁ?近藤先生と土方先生が考えてんだろ。俺知らねぇもん。」

永倉は指の関節を鳴らしながら欠伸をした。すると続々と他の部員達が道場に現れ始めた。その中に平助の姿を見付けると永倉は脇に挟んでいた竹刀を抜いた。

「平助ー!!遅ぇぇ!!」
「何で俺だけ名指しなんだよ!!!」
「特別扱いだコラぁ!!」
「うっわーすっげー嬉しくねー!!!!」

ブーイングをする平助に永倉は竹刀を向けた。

「練習を楽しみにしてろ。」
「ノーサンキュー!!!!」

顔の前で大きなバツを作る平助に冷めた眼差しを向けながら斎藤は沖田の横に来た。

「斎藤君随分とゆっくりなご登場だね。」
「飯くらいゆっくり食べさせろ。」
「それが理由?」

ニヤリと笑う沖田を目を細めて睨み、斎藤は小さく息を吐いた。

「総司、携帯は見たか?」
「は?携帯?」
「朝飯の後から見たか?」
「部室にあるんだから見てる訳ないだろ。」

首を傾げる沖田に斎藤は短く返した。

「後で見ろ。」

無表情な斎藤の横顔を眺めながら沖田はぎこちなく頷いた。

「・・・分かった・・・・。」
「何だ?斎藤の奴。」
「さぁ?」

永倉を見ながら沖田は肩をすくめた。すると道場に顔色の悪い原田と既に眉間を寄せた土方が入ってきたのを見た部員達は慌てて整列を始めた。沖田と永倉もそれに加わる。

「今日は知っての通り1時から練習試合がある。練習試合と言ってもお互いの強化が目的だから向こうの学校と合同で練習した後にちょっとした試合形式のゲームをする。出来る限り全員出させるつもりだからこれからの1時間の練習も集中して行え。以上。」

土方の話が終わると部員達は通常の練習メニューを始める為ランニングの準備をする。平助は斎藤、沖田の前で軽く準備運動をしながら先程の土方の話を思い出していた。

「今日の練習試合って只の合同稽古なんだな。なんかちょっと拍子抜け。」

沖田と斎藤は顔を見合わせ、小さく互いに溜息を吐いた。

「今、良かったって思ってるよね。斎藤君。」
「それはお前もだろ。」
「心底ね。」

ニッコリと笑う沖田に斎藤は薄く笑みを浮かべた。

「な、何二人だけの世界に浸ってんだよ!!俺も仲間にいーれーてー!!!!」

叫ぶ平助を無視して沖田と斎藤はランニングを始める。平助は二人の後ろでぶーぶー言いながら走る。

「風間だったか、あいつも今日来るんだろうな。」
「だろうね。本当に面倒臭い。面倒臭いしあいつの顔なんか見たくもない。」
「見たい奴なんか居ないだろ。土方先生なんか既に眉間の皺が凄い。」

沖田は腕を組んで遠くを睨んでいる土方を見て笑った。

「人殺しの顔だね。」
「見た事あるのか?」
「ないよ。想像。」
「そうか。」

のんびり走りながら斎藤は先日の事を思い出す。千鶴が、風間に会いに行った日の事を。最初から最後まで風間の印象は悪かった。最後は最低なほどだった。また今日会わなければならないのかと思うと憂鬱で仕方なかった。

「面倒臭い。」
「急に何。」
「思い出しただけで面倒臭くなった。」
「思い出すからだよ。」
「思い出さないのか?あんな衝撃的な人間を。」
「思い出してない事にすればいいだけ。あの日の事は全て二次元だよ。」
「結局は思い出してるんだろ。」

呆れた様に言う斎藤に沖田は首を振る。

「二次元だよ。」

そう言い切る沖田に斎藤は何も返さなかった。
沖田と斎藤の前を走るのは永倉と原田。二人は他の部員よりも早いペースで走っている為、二人と沖田達との距離は少し開いていた。

「良かったなー左之。今日は合同稽古で。」
「名目上はだろ。結局は最後普通に試合になると思うけどな。」

原田は深く息を吐き、小さく舌打ちをした。

「ったく土方先生も鬼だよな。試合に出たくないって言ったら満面の笑みで『死ね』だぜ。パワハラだ完璧。」
「あの人の暴言なんか今更だろ。」
「今回は本気で嫌なんだよ。」
「無視すりゃいいだろ?不知火なんか。」
「出来るもんならそうするよ。」

もう一度溜息を吐く原田に永倉は笑う。そんな永倉を原田は横目で睨んだ。

「笑うな。」
「無理。」
「この野郎・・・・。」

本気で怒る原田に永倉苦笑いしながら謝る。

「悪い悪い。」
「思ってない癖によく言うぜ。ホント。」
「でも不知火もしつこいな。一年以上も前の事をぐだぐだと。まぁ、あいつは被害者みたいなもんだからなぁ。」
「俺が被害者だ。」

告白してきた女子が結構可愛くてスタイルも結構良かった為付き合ったら相手には彼氏が居た。揉めるのは目に見えていたのでそれを避ける為に別れたが既に時遅く、相手の彼氏にバレてしまった。その彼氏が不知火だった。彼女にベタ惚れだった不知火はそれ以来原田に何かと突っ掛かるようになった。

「腐れ縁ってやつか?」
「全然言葉の遣い方が間違ってんぞ新八。」

冗談じゃないと吐き出しながら原田は今日何度目か分からない溜息を深く、深く吐いた。
そし数秒後、私語がバレた永倉、原田、沖田、斎藤の四人は鬼副顧問から追加メニューとして早素振り1000回が言い渡される事になる。

 


★☆★☆

 


午前11時。
朝食を終えた私は着替えて山南さんの部屋に居た。山南さんに淹れてもらったココアを飲みながら松本先生について話す。

「松本先生は学校に居る間は寮だったんですよね。」
「そうです。と、言ってもあの人の場合は本当に寮は寝る為だけでしたけど。」
「お部屋に行った事はあるんですか?」
「それなりにありますよ。全部文句を言いにですけど。」
「はぁ・・・成る程。」

ニッコリと笑いながら言う山南さんの背後に黒いオーラが見えたのはきっと目の錯覚だろう。そんな二次元的な展開はいらない。

「その時部屋に入って驚いたのは本当に物がなかった、ということですね。」
「本とかもないんですか?」
「ありませんでしたね。あの人は保健室に私物を置いていたので。それか学校に無理を言って自分の読みたい本などは図書館に置いてもらってますから。」

本当に自由きままにやってたんだなぁ。松本先生。

「医者としては素晴らしい人でしたが、ここでは只の人格崩落者でしたよ。」

山南さんは深く溜息を吐きながら珈琲を飲んだ。
というか人格崩落者って初めて聞くんですけど。

「さてと、そろそろ行きますか。」
「はい!」

勢いよく頷く私に山南さんは顔を顰めた。

「雪村君、過度な期待はしない方がいいですよ。」
「分かってますよ。」

分かってる。と、言っても矢張り期待はしてしまう。だって、いくら寝る為だけだと言っても少しくらいは荷物がある筈だし。学校に父さんが来ていたならその時の事が何か分かるような物があるかもしれない。松本先生と交流のあった人達が誰だか分かるかもしれない。
もしかしたら、父さんの行方が分かるかもしれない・・・。

「山南さん、行きましょう。」

私は先頭切って部屋を出る。山南さんはもう一度溜息を吐いてから部屋を出た。何故、こんなにもやる気が見れないというか乗り気ではないのか。この時の私には分からなかったけど十数分後の私にはハッキリと分かる。
松本先生が使っていた寮は学校から一番近い所にある寮でそこの403号室。山南さんは鍵の束を取り出すとその中から『403』と書かれたシールが貼ってる鍵を選び鍵穴に入れた。

「雪村君開けますよ。」
「はい、お願いします。」

山南さんは鼻で息を吐き出すとゆっくりと鍵を回した。カチッという鍵が回る音が聞こえ私の心臓は動きを速めた。ドアが開き山南さんが先に中に入る。私もそれに続き室内に入った。そして、その光景に目を見開く。

「・・・・・これは・・・。」

山南さんの呟きも、私の耳を通りぬけていった。そこに広がる光景に私はただ茫然としていた。室内は土方先生や山南さんの部屋と同じ間取りになっていた。それでも、凄く広く感じるのは室内に家具が何も置かれていないから。室内には本当に何もない。机もテレビもベッドも。何もなかった。

「ここまでさっぱりしているとは・・・。ベッドと机はあった筈なんですが。」

室内を見渡しながら山南さんは顔を顰めている。

「寮を・・・寮を間違えているとかは?」
「ありえませんね。何回も通っているんですよ。」
「ですよね・・・・。」

室内を歩き回っても何もない。お風呂場を見てもトイレを見ても何もない。トイレットペーパーがあるだけ。

「いつの間に家具を片付けたんですか・・・あの人は。」

頚に手を当てながら山南さんは呆れた様に呟く。私は只頭が真っ白になっていた。

「雪村君、大丈夫ですか?」
「・・・・・・・・・・・へい。」
「大丈夫ではなさそうですね。」

山南さんは小さく息を吐き、部屋の中を再度見渡し徐にクローゼットを開けた。

「ん?何かありますね・・・・。」

山南さんはしゃがむとクローゼットの中に手を伸ばして何かを取ろうとしていたので私は山南さんの隣に行き様子をうかがう。山南さんは壁とクローゼットに設置されている棚の隙間に挟まっていた一枚のメモ用紙のような物を取り出し、そこに書かれている言葉を確認する。

「・・・これは。」

目を見開く山南さんに私の心拍数は一気に駆け上がる。もしかして、何か重要な事が書かれていたのかもしれない。私は山南さんの手からその紙を抜き取り書かれているものを確認した。

「・・・・・・・・・・・・・・・は?」

私が間の抜けた声を出すと山南さんは立ち上がり今日一番の溜息を吐いた。

「何をやっているんだ・・・あの人は。」

その紙に書かれていた事。それは・・・・・、

「スナック・アルペジオ・・・・。」
「の地図。ったく、本当にあの人は・・・。」

ご丁寧にハートマークまで書いてあるそれは『スナック・アルペジオ』までの地図だった。

松本先生!!!小説ならここで重要な手掛かりが見つかる展開でしょ!!
空気よんで下さいよ!!!!
 

続く


久し振り過ぎてキャラの口調がぶっ飛んでて申し訳・・・・汗

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