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51.『ある朝の風景』

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朝、カーテンを開けるとどんよりとした曇り空が目に入った。確か予報では今日は晴れのはずだったのに・・・。何だか嫌な予感がしつつも考え過ぎだと自分に言い聞かせながら灰色の空か視線を逸らす様にカーテンを閉めた。今日は土曜日、壬生学園と京帝大附属御二学園の剣道部の練習試合がある日です。

土曜日は選択授業を選択している生徒以外は授業がないので部活や授業がない生徒は朝起きるのが遅い為、朝の学食はいつもの朝からは考えられないくらいに人が少なかった。
現時刻は食堂の時計で10時過ぎ。広い食堂には私と沖田さん斎藤さん平助君以外に数人の規模グループが点々と席に着いて朝食を食べているだけだった。だから全くの静寂ではないけど静けさが漂う食堂には調理する音が広がるだけだった。そんな静かな空間に、平助君の声が轟いたのは朝食をもらい、四人が席に着いて二三口食べた直後の事だった。

「はぁあぁぁ?!俺聞いてねーよ!!!」

椅子から立ち上がり物凄い剣幕で私を見る平助君を隣に座る沖田さんが笑顔で注意した。

「平助君、煩いよ。」

ニコニコと爽やかな笑みを浮かべてはいるが明らかに黒いオーラを背負っている沖田さんに平助君は顔を引き攣らせ、静かに椅子に座ると上目遣いで私を睨んだ。私の隣では斎藤さんが呆れた様に溜息を吐くと静にお茶を飲んだ。

「何で今日部活出ない訳?」
「えっと・・・・用事があるから。」
「聞いてないし・・。」
「言ってないからね。」

皆が席に着くと自然と始まった会話の内容。それは勿論今日この後お昼頃から開始される京帝大附属御二学園との練習試合の事。三人共対戦校の実力を知らなかったので誰が試合に出るのか、予想を立てていた。近藤先生も土方先生もどういった形式で試合をするのか説明をしていないらしい。実力からいくと試合に出るのは永倉先輩、原田先輩、沖田さん、斎藤さん、平助君の五人。しかし、今日は練習試合なので普段公式戦等に出れない部員の経験の場として他の部員が出る事もあるかもしれないと。
そして、もしも試合に出るならという話になり平助君が私に言ったのだ。

「千鶴千鶴、応援宜しくな!」

ニコニコと人懐こい笑みを浮かべる平助君に絆されて思わず頷きそうになった私は慌てて両手を合わせて詫びたのだった。

「ごめん、今日部活休むんだよね。」

私がそう言うと、平助君は椅子から立ち上がり食堂に響き渡るほどの大声を上げたのだった。朝食のメニューの一つのうどんを食べながら平助君は口を尖らせる。

「つーか千鶴居ないとか有り得ないんだけど。」
「何で・・・マネージャー居てもあまり試合には関係ないんじゃないの?今まで居なかったんだからサポートなら他の部員同士でも出来るし・・。」

マネージャー失格発言をする私を平助君は目を見開くと両手の拳をテーブルに叩き付けた。その衝撃に沖田さんと斎藤さんが平助君を物凄い極悪な目で睨んだが睨まれている本人は気付いていない。

「関係あるし!!つか関係ありまくる!!主に俺のモチベーションに関係大有りだから!!!!」
「そ・・そうなんだ・・・。」

平助君の剣幕に私は少し引き気味になる。平助君は床に落ちる箸を無視して少し椅子を引いた私の両手を掴んだ。

「へっ平助君?!」
「千鶴!俺とその用事どっちが大事なんだよ!」
「は?」
「俺の事置いていっても大丈夫なのかよ!」
「あの・・・平助君?」
「千鶴っ、俺はお前・・・」

その言葉の続きを平助君が言う事はなかった。何故なら、笑顔の沖田さんに頭を掴まれたかと思うとそのまま顔面をテーブルに叩きつけられたから。そして鈍い音と食器が揺れる音が聞こえたかと思うと私の手を掴んでいた平助君の両手が力なく離れた。

「総司、うどんがこぼれたらどうするんだ。食べ物を粗末にすると渡辺さん(学食のおばさん)に怒られるぞ。」
「大丈夫、渡辺さん僕には優しいから。それにそんなヘマはしないよ。斎藤君だってウザかっただろ?これ。」

これ、と沖田さんが指さしたのは勿論テーブルにうつ伏せている平助君。斎藤さんはチラリと平助君を見遣るとご飯に箸を伸ばした。

「まぁな。」
「なら僕に感謝してほしいね。」
「感謝する程の事でもないだろ。」
「あ、あのお二人とも・・・平助君動かないんですけど・・。」
「大丈夫。かまってもらえるの待ってるだけだから。放っておけば直ぐに起きるよ。」
「千鶴、そいつを甘やかすな。」
「そ、そういう問題なんですか・・?」

でも、物凄い痛そうだったんですけど・・。私はちょっと心配になって平助君の手を突っ突いてみた。

「へ、平助君?」

何度か突っ突くとピクリと平助君の手が動き、そのまま手を掴まれた。

「ヒぃっ!!」

突然掴まれ驚いた私は思わず変な声を上げた。平助君は力なく顔を上げると掴んでいる私の左手を両手で握る。

「見た?聞いた?この残虐非道さ・・・俺ってちょーカワイソウ・・。そう思わない?」
「え?あ・・・そ、そうだね・・・ちょっと今のは可哀想かな・・とは思うよ。」
「だろ?だろだろだろだろ?俺すっげー傷ついた。めっちゃ傷心中。なぁなぁ、こんな俺置いて行くなんて優しい千鶴には無理だよな~?」
「あ、そこに話し持って行くんだ。」

若干おでこが赤くなっている平助君の言葉に私は半眼で彼を見遣る。
案外そんなに痛くなかったのかな・・。

「何でそんなに俺に居てほしいの、平助君。」
「決まってんじゃん!」

がばりと身体を起こし、平助君は真っ直ぐに私の目を見詰める。勿論手は握られたまま、というかいつの間にか両手握られてるし。

「千鶴に見てほしいから。」
「何を?」
「俺のカッコイイところ。」
「はあ・・・。」
「そんでもって俺に惚れちゃえよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「な。」と言ってウィンクする平助君に私は苦笑いするしかなかった。

「平助君お楽しみの最中に悪いけど時間見てみな。」

沖田さんは残っていたお茶を飲み干すとトレーを片付ける為に席を立った。そう言えば斎藤さんのテーブルには既にお茶の入った湯のみしかない。平助君は慌てて時計を見ると私の手を離した。

「最悪っ!何で時間教えてくれないんだよ!!もう10時10分過ぎてんじゃんか!!」

平助君は凄い勢いでうどんを食べていく。
ちゃんと噛んでるのかな・・・なんか麺そのまま喉通ってそう。

「まだ10時過ぎたばかりだけど・・・何かあるの?」

食べてる所悪いと思いつつも必死にうどんを食べる(飲む?)平助君に聞くと平助君はうどんを口いっぱいに頬張っていたせいで喋れなかったらしくて斎藤さんが代わりに教えてくれた。

「この後試合前に練習があるんだ。その後道場の掃除をして相手を迎えるから今日は練習が10時半から始まる。」
「え、10時半ってもう直ぐですよ。用意とかって・・。」
「全部出来ている。」
「へぇ・・・忙しいんですね。」

ゆっくり朝食を食べる私の前では凄い勢いでうどんを食べる平助君。なんかこの後絶対に喉詰まらせそう・・・。
平助君のコップに水が入っていないので自分のお茶を飲み干すと席を立ち、自分の分のお茶と平助君の水を持ってくる。

「平助君水置いておくよ。」
「はんきゅ~~」

口の中にうどんが入っているせいでサンキューと言いたかったらしいが私にははんきゅうーにしか聞こえなく、何だか可愛くて笑ってしまった。

「そう言えば沖田さんは?」

トレーを戻しに行ってから戻ってきていない沖田さんを捜すが食堂には居なさそうだった。

「先に行った。今日は当番だからな。」
「あ、そうか。」

土曜は沖田さん達が道場の準備当番だっけ。

「ごっそーさん!!!」

両手を勢いよく合わせると平助君は水を一気飲みした。口の周りにはうどんの汁がついていて、それを服の袖で拭く前にテーブルに備え付けのティッシュを彼の前に置く。

「食ったなら行くぞ。」
「りょーかい。」

口を拭くと平助君は私を見て口を尖らせた。

「千鶴絶対今日部活出ないんだよな?」
「う、うん。」
「平助、しつこいぞ。」
「俺にとって重要な事なんだから仕方ないじゃん。」
「そんな事知らん。俺はもう行くがお前はまだここに居るか?」
「俺も行くよ。」
「ならさっさとそれを片付けろ。」

それ、と言って斎藤さんが指さしたのは勿論平助君の前にあるトレー。平助君は「はーい。」と学生が先生に言う様に返事をするとトレーの上にコップを載せた。

「一君のも持ってっていい?」

お茶がまだ少し残っている湯のみを指さす平助君に斎藤さんは頷いた。

「頼む。」
「俺って優しい~。」
「人として当然の事だ。」
「人として当然の優しさが一君からは感じられない・・・。」
「対お前には持ち合わせていないからな。」
「鬼!!!悪魔!!!!」

捨て台詞の様な言葉を斎藤さんに言うと平助君は湯のみをテーブルに戻し自分の分だけを片しに行った。斎藤さんは自分の前に戻ってきた湯のみを無表情で睨んだ。

「余計な事言うからですよ。」
「別に自分で片せばいいだけの事だ。」
「いいですよ、私片しておきます。」
「悪いな。それと平助が居ないからといって、他の人間も居る場所で自分の事を『私』と称する事は勧めない。」
「・・・以後気をつけます・・。」
「そうする事だな。」

残っていたお茶を飲み干す斎藤さんを見遣り、私は一回視線を逸らし、もう一度斎藤さんを見た。

「今日、頑張って下さいね。」
「何をだ。」
「試合ですよ。」
「負けるのは癪だからな。特に・・・あんな奴に。」

でしょうね・・。本気で嫌そうな顔をする斎藤さんに私は苦笑いを向けた。

「やっぱり風間さんと対戦するのは永倉先輩なんですか?」
「いや、相手の実力が分からないからな。新八が出る程の相手なのか、な。」
「成る程。永倉先輩ってそんなに強いんですか?」
「この年代じゃ一番かもな。」
「そ、そんなに・・・。」
「だが、総司も同レベルだから・・・夏は新八が勝ったが今は分からないな。」
「へぇ・・・でもお二人とも体格いいですからね。」

言いながら私はこの間の平助君の言葉を思い出す。

『新八っつあんと総司に一君。この三人は拮抗してるなぁ。』

「斎藤さんも・・・お二人と同じくらい強いんですよね?」
「は?」
「平助君が言ってましたよ。」
「・・・俺の場合左利きだからな。それもあるんだろ。」
「やっぱり利き手が違うと違うんですか?」
「まぁな。」
「へぇ。ちょっと見てみたいかも。」
「何をだ。」
「今日の試合。」

永倉先輩と沖田さんと斎藤さんが本気で剣道をやる姿を見てみたいと、思った。

「無理だろ。」
「分かってますよ・・・。」
「見たいなら公式の試合を見に来ればいい。」
「え?」
「3月に高校生の大会があるからな。」
「見たいです!」
「なら、来ればいい。」

そう言って薄く微笑む斎藤さんに私は頷いた。

「はっじめ君ー!時間!やばいよ!!」

トレーを片した平助君が時計を指さしながら戻ってきた。斎藤さんは携帯で時間を確認すると眉間を寄せる。

「行くぞ。」
「了解!じゃぁな千鶴!」
「頑張ってね。」
「勿論!!」

親指を立てる平助君に私は手を振る。そして椅子から立ち上がった斎藤さんを見上げる。

「斎藤さんも、頑張って下さい。」
「ああ。」
「沖田さんにも、伝えておいて下さい。頑張って下さいって。」

ここには居ない沖田さんに言いたかった事を斎藤さんに託す。が、斎藤さんは小さく息を吐いた。

「そうゆう事は自分で伝えろ。」
「え、でも・・・無理ですよ。」
「メールでもいいだろ。」
「見てくれますかね?」
「見るだろ。それに、俺が伝えるより直接じゃなくてもお前の言葉で伝えた方があいつも嬉しいだろ。」
「・・そうだと、嬉しいですね。」
「・・・・・・・そうか。」

道場に向かった二人を見送った私は早速携帯を取り出しメールを打つ。
ありきたりな言葉しか送れないけど、何も伝えられないよりかはいいと思う。

「さてと、皆は試合を頑張るんだから私は松本先生の部屋の捜査を頑張らないと。」

一人で気合を入れると朝食をさっさと食べて山南さんの部屋に向かう事にした。


この後、私は衝撃的な事実を目の当たりにする。
そして、誰も知らない。

剣道場でこの後起きる事を、誰も知らない。

 

続く

 

また進まなかった・・・・。
無駄話が多いんだよな・・・。

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